経口避妊薬の低要量ピルが9月2日から一斉に国内で
販売開始されました。
服用には医師の処方が必要ですので、必ず医師の指示に従って下さい。
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世界で広く使われている低容量の経口避妊薬「ピル」が日本でも医師の処方により使えるようになりました。低容量ピルは健康な女性が長期間服用する可能性があることから副作用の研究が熱心にくり変えされてきました。安全で避妊効果の高い「飲む」避妊薬です。といっても副作用がまったくないわけではありません。
また、すべての女性が使えるわけでもまりません。毎日欠かさず飲む手間や費用もかかります。
低容量ピルとは避妊を目的としてうくられたクスリで卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲストトゲン=人工的に合成された黄体ホルモンの総称)の二種類の合成女性ホルモンが配合されている錠剤です。
これを服用中はホルモンのバランスを妊娠しているのと似た状態にすることができます。
すると卵巣の働きが抑えられ排卵が起こりませんから、妊娠を妨げるのです。
さらに子宮内膜や子宮の入り口の粘膜の性質も変化させ、妊娠しにくい状態をつくる働きもあるそうです。
低容量ピルは高い避妊効果を維持しながら、しかも副作用を極力迎えるようにと、含有ホルモン量を有効限度ギリギリまで減らすことに成功したクスリです。
古典的なピルに比べて、エストロゲン量は5分の1に、プロゲストーゲン量は20分の1まで少なくなっています。
ピルの避妊効果は正しく飲めば、ほぼ100%だそうです。ただ、飲み忘れなどを考慮すると95%に下がります。それでもコンドームの86%よりはずっと高く、今まで開発された一時的な避妊法のなかでは、最も確実な方法とのことです。
ただし、コンドームと違ってピルでは感染症は防げないことも知っておきましょう。
ホルモンの副作用、前述したようにピルの主成分は卵巣から分泌される卵胞ホルモン「エストロゲン」と黄体ホルモン「プロゲストトゲン」の二種類です。
このため、ホルモンの分泌に関係する腫瘍である乳がん、子宮がん、子宮筋腫の患者、過去になったことがある人は服用できないそうです。
ピルの主な副作用は血管の中で血液が固まる血栓ができやすくなる現象です。
血栓が血管内で詰まる脳血管障害、心臓の冠動脈疾患、肺塞栓症のある患者や疑いのある人は飲んではいけません。
出産後に起こりやすい血栓性静脈炎も同様、またピルは肝臓で分解されるので肝臓がんや重い肝臓障害がある場合もだめです。高血圧症、高血圧なども禁止の対象です。
中央薬事審議会は6月、低容量ピルの承認に当たり、こうした服用禁止の対象を17項目にわたって定めているそうです。
この中で「35歳以上で1日たばこを十五本以上吸う人」と喫煙に一項目割いています。
ピルと喫煙が相まって、心臓の血管系の障害を増加させる危険があるためで、米国で30年以上ピルの研究、臨床に携わってきた矢沢珪二郎ハワイ大教授は「35歳以上の喫煙者が絶対禁忌とされているが、年齢のいかんにかかわらず、たばこは危険を増加させる」と指摘しています。
これら副作用を避けるため、医師はピルの希望者に問診や血圧測定、検査を行ないます。ピルの一周期(4週間)分の価格は各社とも3千円前後だが、処方時の問診や各種の検査費用は健康保険の適用対象外で、実際の負担は個人によって差が出てくるそうです。
飲み忘れに工夫、発売されたピルは、同じ一周期分でも28錠と21錠の2種類です。
実際に妊娠を避けるためにピルが必要なのは3週間(21日)で、4週目の7日のうちに月経がのような「消退出血」があり、この4週目はのむ必要がない。
28錠タイプは22日目から28日目までを成分を含まない儀薬を飲み、次の周期開始日を分かりやすくし飲み忘れを防ぐのが狙いだそうです。
また、飲み始めをいつにするかで「サンデースタートピル」と「DAY1スタートピル」の2つのタイプがある。月経開始日に服用を始めるのが「DAY1」。
開始後、最初の日曜日まで待って飲み始めるのが「サンデー」。
サンデータイプは、周期は開始がいつも日曜日になるため忘れにくく、出血が4週目の月曜日から金曜日で終わるために週末の旅行などの予定が立てやすいとのことです。
低容量ピルを使うには、医師の診察を受けて、処方箋を書いてもらう必要があります。
医師に低容量のピルの安全性と副作用について十分聞くことが大切です。
安心してピルを使うための手続きだと考え、普段の健康管理のことを考え合わせると通いやすい、かかりつけの医師を選ぶのが望ましいと思います。
神奈川新聞(平成11年)9月7日(火)版&雑誌からの抜粋。 |
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