清原和博内野手(32歳=巨人)が1月7日(日本時間)から初の海外トレーニングを開始し、生まれ変わりを誓っています。初日は指導役となるケビン・ヤマザキ・トレーナー(43歳)と今後の方針について話し合い、あらためて「5歳若返り、以前の荒々しさ、威圧感を取り戻したい」と強く申し入れた。野球では珍しい、いわば格闘家方式で、完全復活を目指しています。
ひざがブルブルと震え、歩くのもおぼつかない。約8時間半のトレーニングを終えた清原は口元から白い歯をのぞかせた。
「これだけの練習をやってきたのは自信になる。一塁はマルチネスとの戦いや。キャンプ、オープン戦で決着つける気持ち。3月がプレーオフくらいの気合でやらんとな。あとは天の裁きを受けるだけや」
昨年相次ぐ故障による大不振に陥り、3年連続V逸。渡辺オーナーには「困ったものだな」と見放され、フロントはトレードによる放出を検討したほどだった。年末には鹿児島の最福寺で「護摩行」修行。年が明けてからは昨年オフに雑誌の対談で知り合った格闘家の前田日明選手(リングス)の紹介で個人トレーナーのケビン・ヤマザキ氏との自主トレのため米シアトルに入った。
プロの野球選手である前に、プロのアスリートとして鍛えようと思った。
ケガも多かったし体を鍛えなおそうと・・・。
一生のうちにこれだけ腹立てて頑張る時期もないやろし、
自分自身復活したいから。 |
ケビン・ヤマザキ(43歳)氏
東京都生まれ。15歳のとき、実父の死をきっかけに、おじのいる米ミシガン州へ渡った。ミシガン大卒業後には、フィットネスクラブで働きながらノウハウを学んだ。
スプリント・コード・トレーニングと呼ばれるチューブトレーニングに定評がある。
また、格闘技以外にもアメリカンフットボールの選手をも手がけている。 |
年明けから禁酒継続「5歳若返りたい」
清原選手は何を望んでアメリカまで行ったのか。5歳は若返った体になりたい。体を鍛えると共に威圧感を取り戻したい。
ケビン・トレーナーは3週間あれば5歳から10歳は若返ることができるだろう。君の野球でのキャリアは知らない。だが、ここ数年は、動こうと指令を出しても、体がついてこなかったんじゃないか。体が若返れば、あとは宮崎キャンプで技術を磨けばいいんだ。
具体的な目標として、19.2%だった体脂肪をまず15%まで落とす。本人の希望で104キロの体重を90キロ台まで戻す。
同トレーナーは「筋肉を増やして、脂肪を落とす。そして新しい筋肉に野球の教育をしていかなければならない」と説明した。同トレーナーは格闘家の佐竹らを鍛え上げるなど格闘技選手の指導で成果をあげてきた。
野球選手の指導は初めてだが筋肉をつけるだけで終わらぬように、毎日バットスイングを行い、感触をチェックしながらメニューを決めていくそうだ。
格闘家の前田選手は心肺機能25%アップ
ケビン・トレーナーのトレーニング理論は昨年、格闘家の前田日明選手(リングス)を見事に改造した。カレリンとの引退試合に備えた前田が、1月下旬から3週間弟子入り。体脂肪が5%(約6キロ)減り、心肺機能は25%アップした。
前田選手の改造テーマは、
1.脳と筋肉の神経系統と、それを素早く動かすときの酸素摂取量
を増やす。
2.脂肪を減らして筋肉を増やし、なおかつスピードを落とさない。
3.競技に必要な筋肉を正常に動かすために、前と上に動く体の軸
を修正する。
の3点。ゴムチューブ引き、レッグプレスなどのメニューをこなすほか、食生活ではチキンばかり食べさせたんぱく質中心に摂取。10歳若返るというデータを見た前田選手は「体重は118キロのままだが105キロぐらいに感じる。
自分でもびっくりするほどスピードとパワーがついた」とカルチャーショックを受けていたそうだ。格闘家と野球選手では鍛えるポイントが違うが、基本的な理論は大きく変わらないはず。見た目は変わらなくても中身が大幅に進化するケビン・トレーナーの改造手術で清原選手も若返りを目指す。
スポーツ選手の体脂肪率
巨人は昨年体脂肪測定器を購入し5月、選手は測定を行なった。最も少なかったのは川中選手の7%で松井選手は9%、高橋選手は11%と多くの選手が15%未満だった。この時清原選手は手首に受けた死球の影響で測定していない。
また、近鉄では2月までに体脂肪率15%を超す投手はサイパン1軍キャンプに参加できない、と通達がでたばかり。ちなみに大相撲では平均34%、ボクシング元WBA世界ヘビー級王者マイク・タイソンは9.5%、ラグビー日本代表の増保輝則選手は9.6%、スキーフリースタイルの里谷多英選手は11%となる。
「初スイング」あくまで肉体改造は打撃復活のため
トレーニングだけでなく、バットの振り込みも重要。腕や腰にチューブを巻きつけながらの素振り。チューブに引っ張られ、思うようにスイングが出来ない清原に対しケビン・トレーナーは「打撃に必要な筋肉を刺激するためです。単に筋肉ムキムキになっても仕方がない。トレーングでつけて筋肉を野球用に教育している訳です」と説明。清原選手はトレーニングといえば身体が疲れるものと思っていたが、今回は脳が疲れる。全身の神経を刺激されている感じだ。と感想をもらしている。
投手の球は宮崎キャンプで朝から晩まで打つよ。まずは基本の素振り。とことん振り込んでいきたい。と、あくまでひたむきに復活を目指す。。
食事も大改造
完全復活へ肉体改造に挑む清原選手。食事にも大改造、メジャー流に1日5食を摂取している。ケビン・トレーナーは「空腹時に筋肉が落ちる」という持論を持っているそうで、1日に4度から5度に分けて食事をとるアドバイスを送った。
清原選手の1日は食事に追いまくられる
午前9時に起床するとまずはプロテインを飲む。その1時間後にサンドイッチなどの朝食。その後、練習がスタートすると、トレーニングの合間をぬって午後1時、午後4時30分、午後8時と3度もレストランへ。
トータルの練習時間と食事時間が同じ状況が続いている。
体重増えず
自主トレを指導するケビン・トレーナーは「空腹時は筋肉が落ちるので空腹を感じることがないように小刻みに食事をとるんです」と説明した。
食事はカロリーではなく、メニューは鶏肉や白身の魚といったタンパク質か中心という制限がある。「トレーニングを続けていれば太る心配はない」と断言する。中でも鶏肉を勧め、1日に3度は鶏肉を食べる。小刻みな食事法はシーズンでも続けるつもりだ。
ジャイアンツ球場のトレーニング室にも(食事例として)メジャー選手のメニュー表が張ってあるが、1日に4、5度も食べていた。今まで何だと思ったが、ようやく意味が分かったよ」と清原。同トレーナーからは「すべてが、きちんとした食事である必要はない」と助言され、試合中に
栄養補助ドリンクや軽食を取ることで補っていく。清原選手は「さあ焼き肉だ、すしだ、フグだという食生活だったからなあ」とポツリ。
肉体改造の成否はトレーニングではなく意識改革もがポイントですね。
1月8日の食事
・午前9時起床とともにプロテインを飲む
・午前10時サンドイッチ(ハム、野菜)、ダイエット用のコーラ飲料
・午後1時バイキング方式のレストランで、照焼きチキンを6個、
鳥のから揚げを2個。サラダ、白身魚のムニエル、
デザート(脂肪なしのソフトクリーム)
・午後4時30分特大オムレツ、ダイエット飲料
・午後8時照焼きチキン、刺し身(タイやサバなどの盛り合わせ)、
サラダ、酢の物、ご飯、みそ汁、お茶
自分を追い込む
年明けから禁酒を断行していたが、現地入りし3日後の9日にはヤマザキ氏にセブンスター2カートンを提出し禁煙も決断した。「32歳で身体を振り返ることもなかったし、相変わらず暴飲暴食していた。やっぱりプロとして自分を追い込んでいくのも必要。何かを得ようと思ったら何かを犠牲にせなあかんってのを忘れてた。禁酒、禁煙も続けていかなこの3週間の意味がなくなる」19%あった体脂肪を15%まで減らすために食事制限まで自らの身体に課した。
「ここは世界最先端のトレーニングができるんや。ヘビー級のボクサーの標準値を目指しとるからね」と目を輝かせるあたりに変身ぶりがうかがえる。
清原選手に脅威の肉体改造決断させたのは身体ともにボロボロだった昨年オフに巨人のあるフロント幹部の言葉だった。「清原は体力的にも衰えてきている」周囲を黙らせるには復活しかない。この日も午前9時30分からダッシュ、ジャンプなど下半身の強化メニューを消化し、午後にはウェイトトレ。ハードな内容に何度も顔をゆがめた。
引き締まった体に盛り上がった大腿筋が完全復活へ―。変身・清原がリベンジの時を待っている。
絶賛「NFL並みのパワー」
清原選手を指導しているケビン・トレーナーはミシガン大卒の個人スポーツトレーナーで、前田日明選手や佐竹雅昭選手らの格闘技選手の指導を手がけるほか97年には今年大学学生王者に輝いた関学アメフト部の強化にも当たった実績がある。清原選手は午前中、ルームランナーの速度を上げたり、傾斜をつけてのダッシュと持久走を1日おきに繰り返しさらに小刻みなジャンプメニューで瞬発力の強化。また、チューブで負荷をを与えての素振りで下半身を意識しながらのスイングづくりも行っている。
午後はウェイトトレで1日おきに上半身と下半身の筋力アップ。この日は185キロの負荷でスクワット、400キロでレッグプレス、130キロでレッグエクステンションをこなしヤマザキ氏は「NFLのオフェンスライン並みのパワー」と絶賛した。
夕方にはジム近くのバッティングセンターでティー打撃。極限トレの成果
「スイングが大きくなった」と手ごたえを感じていた。
食事では炭水化物や糖分の摂取を禁止。昼食は鳥のささ身、ウェイトトレ後は卵の白身とプロテイン、朝晩は白身魚やチキンを中心にした食事を徹底している。
自主トレは24日に打ち上げ
清原選手は1月25日米ワシントン州シアトルで自主トレーニングを終え、帰国しました。今後は改造した肉体の維持が焦点で、ケビン・トレーナーも近く来日し宮崎キャンプでアドバイスをもらうことになっているそうだ。
「もちろん、トレーニングも食事も続けていくことが大切、ただ、今回の3週間よりはリラックスしていい」と話している。レギュラー争いを大きく左右するキャンプまでもうすぐ。心身ともに大変身した清原が、いよいよファンの前に姿を現す。
この答えは、10月シーズンを振り返って出るのでしょう。しかし、ここで努力した財産は、いつまでも清原選手の心に残ることでしょう。
意地の復活まで、もうすぐだ! 2000/1/28
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