SportJUST 2000.12月号

辻秀一著スラムダンク勝利学

から学ぶ
スポーツのもつ楽しさをアレンジする
スラムダンク勝利学から「勝つ」とはいったい何だろう


[ HOME ] [ BACK ]


Sport JUST」とは、日本スポーツ少年団「スポーツ情報誌」です。その中から、どうして今スポーツアレンジなのか、というお話です。

子どもを主役にするスポーツアレンジ
多くのスポーツは「遊び」から始まりました。最初は、場所も、用具も、人数も、ゲームの進め方も、その時の状況しだいでどうにでも変わりました。「人にスポーツを合わせて」楽しまれていたのです。ところが、そのスポーツがさかんになり、多くの人が楽しむようになると、勝ち負けが大きな関心事となり、それにともなってルールも細かく厳しいものとなってきます。
公式ルールによってボールの弾み方やネットの高さまで細かく決められます。公式ルール化によって、さまざまな地域の人々が一堂に会してそのスポーツを楽しめるようになり、国際試合もできるようになりました。しかし一方で、スポーツはしだいに「遊び」から離れ、白由にルールを変えたり、工夫をして楽しむことができにくくなりました。いわば「スポーツに人を合わせる」側面が強くなってきたのです。
こどものスポーツにおいて大切なことは、このような公式ルールにもとづいて行う、いわば「スポーツに人を合わせる」思想ではありません。重要なのは、スポーツは遊ぴであるという原点に立ち返り「人にスポーツを合わせる」思想であり、それぞれの子どもの興味・関心や心身の発育・発達に含わせて、予どもたちに、存分に「スポーツ遊び」を満喫させることだといえます。
ルソーは「子ども時代に子供を熱せよ」と言いました。今こそ、スポーツ活動においては子どもが主人公であることを再確認しましょう。体カ的、能力的にすぐれた一部の子どもだけが成功体験をもつようなしくみではなくうまい子もへたな子もみんなが夢中になって楽しめ、その時々に応じてみんなが成功体験をもてるようなスポーツルールの工夫やアレンジが求められているといえましょう。
とはいえ、スポーツ指導をする場合、われわれは、どうしても公式のルールにこだわりがちです、公式のルールこそ正式であってそれ以外のルールは間違ったルールだ、といった誤解からの開放を望みたいものです。公式のルールの適用は、青年期からで十分だといえます。
子どものスポーツにおいて大切なのは、公式ルール信仰に陥ることなく、○○少年団式ルール、○○地区式ルール、その日のルール、子どもが作るルールなど、多様なルールが用意され、場面・状況に応じて「スポーツ遊び」を豊かにする道具として活用されることなのではないでしょうか。今、必要に応じてルールを使い分け、スポーツをアレンジできる指導者の資質が、間われているといえましょう。

スポーツの楽しさとルールの関係
スポーツは、ルールによって性格づけられています。ルールが変わればスポーツが変わります。
ルールの主なはたらきとしては、
 @どちらが勝っかわからない(勝敗の未確定性の保障)
 Aみんなが参加できる(平等・機会の均等)
 Bケガが生じない(安全の保障)
 C整然としている(秩序の維持)
などがあげられます。しかし、その根底に
D「面白さ」が十分に保障されていること(面白さの保障)が大切です。
楽しくなければスポーツではありません。楽しさも表に示しますように決して一つではありません。ですからスポーツルールを変更する際には、そのスポーツのもつ楽しさの要素(プレイエレメント)を大切にしながら「面白さの保障」「勝敗の未確定性」「平等・機会の均等」、「安全の保障」、「秩序の維持」等を勘案しつつ、たとえ体力差や能力差があっても緊張と興奮のバランスがとれるルール(例/ゴルフのハンディキャップ制など)として再構成していくことが重要です。
これからのスポーツ指導者には、ルールの基本的なはたらきと楽しさの要素を大切にしながら、子どもの体力や能力に応じたルール(用具を含む)の変更能力、操作能力がますます求められることになるでしょう。

立教大学助教授 松尾哲矢先生のお話でした。
これを読んで、なるほどスポーツの原点はまず楽しさ。特にジュニアスポーツから裾野を広げるには絶対条件なのでしょうね。

楽しさの分類(高橋、1993)

●競争型…
  他のチームや個人に挑戦し、勝敗を競い合うことを楽しみむ運動
●達成型…
  (1)記録達成型/新しい技やフォームに挑戦し、これを達成することを楽しむ運動
  (2)記録達成型/自分や他人の作った記録に挑戦し、これを達成することを楽しむ運動
●克服型…
  自然や人工的につくられた動物障害に挑戦し、それを克服することを楽しむ運動
●表現・ダンス型…
  (1)創作ダンス型:テーマにあったイメージをリズミカルな動きで自由に楽しむ運動
  (2)フォークダンス型:形式のある動きをリズミカルに踊って楽しむ運動
●体操型…
  身体の必要に応じて行われる運動

 


スラムダンク勝利学から学ぶ「勝つ」とはいったい何だろう
最近読ん(出版された)だ「スラムダンク勝利学:辻秀一著」では、こんな問いかけもしています。 「勝つ」とはいったい何でしょうか?
みなさんはどのようにお考えでしょう。辻先生は「自分らしく、本番をはじめいかなるときにも実力を発揮し、そして自分にふさわしい結果を得ること」。とおっしゃてます。
さらにこう続きます。

他人より速い・遅い・高い・低い、点数が多い・少ないなどという比較の中には本当の勝敗はないと考えています。つまり、一般にいう勝敗などに一喜一憂する必要はないのです。実は結果は常に決まっているのです。そう、自分にふさわしい結果しか来ないのだと・・・。
したがって、その結果をもたらしている「自分らしさ」への追求・努力・向上、そしてそれを「本番で発揮する」ための生き方・考え方にこそ勝利の原点があるのです。すなわち勝つ事と負ける事は反対の関係ではなく、勝つ事と負ける事は表裏一体をなし、ともに人間を成長・向上させるためのものなのです。スポーツのすばらしさはここにあるのです。真に自分にふさわしい結果を手に入れるがために、スポーツを通し、心技体にわたって自己向上し、セルフイメージを拡大していくこと、それが正しくできれば必ずや自己成長につながり、一流の人間となれるはずです。そのことがスポーツでも勝利することのできるアスリートとなるのだという信念が私にはあります。

どうでしたか。辻先生は「自分らしさ」への追求・努力・向上、さらに生き方・考え方こそが勝利の原点。勝つことも負けることも自己を成長させてくれる。これが真のスポーツのすばらしさ。と教えてくれました。前提となるのがスポーツは楽しい。ということでしょう。みなさんにも、勝ったり負けたりで、成長し変化していく自分を感じながらスポーツを楽しんでいただきたいと思います。  2001/1/27


Copyright© 2000 [1人でスポーツトレーニング with Wata倶楽部ネット] All rights reserved