平成14年12月18日
横浜地方裁判所第5民事部合議係 御中
原告Aが、平成6年11月に売却した横浜市緑区霧ケ丘所在の共同住宅と、同人が平成7年8月に若葉台団地に購入した本件住宅の価格算定について
1.はじめに
被告は、その平成14年11月6日付準備書面(24頁)において、本件原告I男・I子の両名に譲渡された住宅(32号棟404号室79.13m2)(以下、「鑑定物件」と言う。)の甲第7号証による鑑定評価額 3770万円の坪単価は157万4770円(平成7年8月25日時点)であるが、他方、原告A(以下、「原告A」と言う)は平成6年11月に横浜市緑区霧ケ丘グリーンタウンの物件(56m2、築14年)(以下、「売 却物件」と言う。)を2980万円で売却しており、その坪単価は175万9149円である。これによると、中古で床面積の狭い売却物件の坪単価の方が芳賀証人の鑑定物件の鑑定による坪単価よりも高いので、芳賀証人による鑑定書はその信用性に欠ける旨の主張をしている。
しかし、被告の主張は一見もっともらしい指摘ではあるが、後述の通り、その主張は前提事実を隠蔽するトリックであり、明白な誤謬である。
2.上記被告主張の非合理性
上記被告の主張の、前提事実の隠蔽による誤謬内容は以下のとおりである。
(1) 価格算定時点の違い
@ 鑑定物件の鑑定評価は、平成7年8月25日を基準日としており、売却物件が譲渡されたのは平成6年11月で、その間には9ケ月以上の時間的違いを生じている。
A ところで、平成6年11月から平成7年8月にかけては、新築マンションの供給が過剰となり、中古マンションの価格が著しく下落した時期で、9ケ月間の売却物件の下落率は1割以上と推測される。
B 従って、平成7年8月時点での売却物件の販売坪単価は、高くみても
1,759,149円×0.9=1,583,234(円) となる。
(2) 敷地持分割合の著しい違い
@ 原告Aが従前所有していた売却物件については、乙第48号証によると
敷地総面積が 50,446.63m2
原告Aの持分割合が 26,827,420分の54,490
従って、実質的敷地持分は 102.46m2
である。
A 他方、原告Aが取得した若葉台の分譲物件(以下、「分譲物件」と言う。)については、別紙(原告Aと被告間の譲渡契約書)によると
敷地総面積が 9,069.81m2
原告Aの持分割合が 100,000分の322
従って、敷地持分面積は 29.20m2
である。
そこには、73.26m2(約22.2坪)もの広狭差がある。
B ところで、集合住宅の価格を積算するについては、通常、建物の価格と土地の価格を総 合して判断する。
そして、敷地の持分割合は、それが大きい程その財産価値を増すところ、どの程度の持 分割合があるかは価格決定に大きな要素を占める。
そこで、実質29m2の敷地持分割合しかない分譲物件と102m2の売却物件では、その 資産価値に大きな差を生じて然るべきものと言える。
すなわち、鑑定物件の土地の評価は13,000,000円(甲第7号証)であるところ、そ のm2単価は約44万円となるので、73m2に44万
円を乗じると3212万円もの差が出ることとなる。この事実に照らすと原告Aが敷地持分 の大きな売却物件を平成6年11月に2980万円で売却したとしても、別段不当な価格で はなく、むしろ低価格であったと言えよう。
結局被告の主張は、敢えて価格算定の違い、マンション形状、敷地割合等を無視して、 単に表面的に数字を比較しているに過ぎず、合理的な算定方法とは到底言えないのみな らず、却って芳賀鑑定書の妥当性を明確にしたものと言っても過言ではない。
以 上
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