2001/11/23
被告側準備書面(第10回口頭弁論に間に合わなかった書面)

平成12年(ワ)第1157号 損害賠償請求事件

                                          平成13年10月31日
                   準 備 書 面(10)

横 浜 地 方 裁 判 所
第 五 民 事 部 合 議 係  御 中


1 平成7年若葉台周辺マンションについて


(1) 被告準備書面(9)23頁の棒グラフ中に記載した数値に若干の相違があったため、次べ一ジのグラフに差し替える。

従前は、不動産調査月報(乙28ないし35)に記載された各物件の平均価格を平均専有面積の小数点以下第2位を四捨五入した数値で除して1平方メートル当たりの単価を算出し、棒グラフ中に記載した。しかし、上記調査月報中に、「m2単価」欄があり、この月報を根拠とする以上はそこに記載された数値を使用すべきであると判断した。訂正後の数値は、従前の棒グラフ中に記載した若葉台団地以外の14物件のうち9物件について、m2単価が1.1万円減少ないし1万円上昇する。

また、物件名についても、上記調査月報の表示に従った。結局、この棒グラフから、原告らが購入した若葉台団地の物件は、販売当時の周辺のマンション市場における相場で販売されたこと、すなわち、若葉台団地の販売価額は当時の適正価額であったことが分かる。




(2) 前ページ梓グラフ中に掲げた物件の価額は、それぞれの販売当初の価額である(乙28ないし35)。

これらの物件は、他社のものであり、完完したか否かは、被告には分からない。原告らが、完売したか否かが重要であると考えるのであれば、原告ら自身で調査されたい。

これらの物件が、平成7年当時、上記棒グラフ記載の価額で市場に出されたことこそが重要である。その販売価額が市場を形成し、その価額こそが当時の適正価額にほかならないからである。

なお、結果として完売しなかったとしても、それだからといって、その販売価額の設定が違法ということになるものではない。



2 被告の価額決定の考え方

被告は、これから販売しようとする物件が存在する地域において、他社の物件が敷地権付建物という1つのまとまりとしてどのような価額で販売されているのかを調査し、それぞれの物件の諸要素を総合勘案して、いくらならその地域で他社物件と競り合って売ることができるのか、という視点から分譲住宅の販売価額を決定している。

このような価額決定の考え方は、マンション販売会社に基本的に共通するものであり、被告特有のものではない。



3 原告ら準備書面10について

同準備書面により、原告らの思考過程がおおむねれ、被告とは考え方が相違することが分かった。なお、以下のとおり、依然として問題のある箇所も存する。



(1) 同準備書面2頁、2@

原告らは、原告ら準備書面7別表3記載の物件を鑑定書(乙10ないし13)が対象としている物件と「同タイプ類似」のものであるとする基準を、「平米単価が同一」であることに求めている。
しかし、それでは、平米単価さえ同一であれば、当該マンションの全住戸が同タイプ類似のものであることにつながり、「類似」という言葉の本来の用例から大きく外れている。



(2) 同準備書面7頁、(E)

@ 原告らは、小林鑑定士の鑑定(乙10ないし12)について、「内訳として土地価格と建物価格とが明確に記載されている。」とし、あたかも鑑定評価額が土地と建物とに分離されているかのように記載している。

しかし、小林鑑定士は、鑑定評価額として比準価格を採用しており、結局、鑑定評価としては土地と建物とを分離せず敷地と建物を一体とした価格を算出している(被告準備書面(9)18ないし19頁、乙10ないし12各16頁、各18頁)。


A 志賀鑑定士の鑑定(乙13)についても、原告らは、同鑑定書別紙1に土地価格、建物価格、積算価格が記載されているとして、最終的に得られた鑑定評価額を、積算価格に占める土地価格と建物価格の割合により、土地分、建物分に割り付けている。

価格の鑑定評価に当たり、原則として、原価方式、比較方式及び収益方式を併用すべきであり、併用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきことが不動産鑑定評価基準に定められている(原価方式による試算価格を「積算価格」、比較方式による価格を「比準価格」、収益方式による価格を「収益価格」と呼んでいる)。そのため、不動産鑑定士は原価方式により積算価格を算出しなければならないが、それはあくまでも、鑑定評価の一過程に過ぎない。志賀鑑定士も、上記評価基準に従い、鑑定の作業過程中に積算価格を求めているに過ぎない。しかし、その鑑定結果は、「積算価格と比準価格を考慮し」て算定しており(乙13・21頁)、土地と建物とを分離せず、一体とした価格を算出していること(乙13・3頁)を忘れてはならない。



(3) 同準備書面10ないし11頁

原告らが主張するところの損害額について記載されているが、すでに述べたとおり、原告らには損害は生じておらず(被告準備書面(8)11頁、同(9)13頁)、そもそも、それに関する主張は失当である。

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