コラム健康 【38話.こんないいお話「ねぎらい」】
厳しい残暑もようやく過ぎましたね。今回は「ねぎらいこそは特効薬」というお話です。
休日に電車で出かけた時のことです。座席は埋まって何人かが立っていた車内に、途中で4人連れの親子が乗ってきました。お母さんが1歳前後の女の子を抱っこし、3歳ぐらいの男の子はお父さんと手をつないで立っていました。そのうち、女の子が飽きてきたのか、声を出しました。するとお父さんが抱っこを替わって女の子を抱え、お母さんが男のこと手をつなぎました。そして、お母さんが男のこの頭をなでました。お父さんも女の子をあやしながら、空いた手で男のこの頭をなでます。4人が一つの魂のように見えました。
妻と私はその光景を食い入るように見ていました。両親からの愛情表現が、自然と上の子に向かっていることに感心してしまいました。私には男のこの満足げな表情が印象的でした。
誰でも幼いころは、母親の買い物のお供をし「xxちゃんは良く歩いたね」と褒めてもらうことに無上の喜びを感じるものです。男の子は1人で手すりにつかまり、もしかしたら抱っこしてもらいたいのを我慢していたのかもしれません。でも、そんな頑張りを一番褒めてもらいたい両親が認めてくれたことで、彼も満足できたのではないでしょうか。このように、対人関係のストレスを緩和する一つの手段は、頑張っているときに、そばにいる人がそのことを認めることかもしれませんね。
働く人のメンタルヘルスに関する米国の研究で、職場で残業している部下をコーヒーに誘ったり、ねぎらったりする上司がいる場合、仕事量が多くても、ストレスに起因する狭心症や心筋梗塞などの心臓病の発生率が抑えられることが報告されてるそうです。人と人との関係は親と子の関係がモデルになるとよく言われます。子供の時には、誰でも母親や父親に褒めてもらいたかったはず。職場や夫婦関係、その他の人間関係でも原点は、褒めてもらいたい子供と母親の関係にあります。
社会生活上の対人関係やストレスも、大人同士が形を変えて頭をなでることができれば、だいぶ緩和できるのではないでしょうか。 2000/9/25
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